経済を止めない為に「組織文化」を止めない-主語をリフレーミングし、協力しあう組織文化の大切さ。

コロナショックによる影響が世界経済へ現れ、リーマンショックより深刻になるのでは?というニュースが流れ始めました。多くの企業でも業績下方修正が起きており、見通しが不透明な中での経営計画策定は困難を極めたかと思います。

私自身も経営者としてパートナー安斎と対話を行いました。その内容はポッドキャストでお話しした通りですが、だした結論は「信頼と対話」がこれからは最も重要になるね、というものでした。

パートナー安斎の呟きを引用します。

毎日悪いニュースが流れて不安が増える中で、協力し合えば問題解決できるはずなのに対話が停止し、買占問題のような「不安による抜け駆け」が発生しがちです。組織も同様に「主語を個人」にすれば、抜け駆けへの不安がまして、協力行動が薄れてしまいます。

「経営目線」では不況リスクや、リモートワークによる不透明さのなか、管理をトップダウンで強めたくなるかと思います。また「個人目線」でいえば上司の顔が見えづらくなり、疑念もでるかと思います。こうした際にこそ「主語のリフレーミング」をし、信じて協力しあう「組織文化」を大切にすることが必要だよね、と考えています。

社会転換期は組織を保持する機能が弱まる

まさにウイズコロナや、アフターコロナがさけばれる中、いまは社会転換期だと思います。

経営学者のメイヨーは、歴史的に社会の転換期は「社会が一つの全体として保持される機能」が弱まるとしました。転換期では無意識に「主語を個人」としてしまい、人間や社会領域において無遠慮に意識が離れていきます。こうした社会の「失調」を回復させるには社会連帯を持つことが大切とされます。

こうした転換期のひとつに提唱されたのが「組織文化論」です。組織文化が注目され始めたのは、くしくも激しいインフレと景気低迷が続いていた、1970年代末から80年代初頭の米国でした。

当時の米国で注目されたのがW.G.オオウチの「Z理論」です。オオウチは人の行動意欲源泉は「集団における、組織文化」とし、それこそが「経営発展する基盤」としたのです。不況下でも伸びる企業は「組織文化・環境」づくりに力を入れており、従業員が自発的に意欲向上がなされている特徴がありました。当時不況下のアメリカを代表する企業は2/3が明確な信念を持っておらず、逆に信念を持つ1/3の企業は好成績の企業が多く、改めて「組織文化」への注目が浴びたといいます。

また具体的に「どのような組織文化」が「企業業績」反映されるかも、J.Pコッター & J.L.ヘスケットが発表しています。長期的に優秀な業績を上げる企業は、「環境変化に、上手く適応できる組織文化を持っている」と結論づけたのです。


オンラインで信じて協力しあう組織をつくるには?

ウイズコロナの状態がしばらく続くとしたとき、オンライン組織に移行した多くの企業が、過去の社会転換期と同じく新たな「環境変化に適応できる組織文化」を問う必要が発生します。

社会転換期は「組織を保持する機能が弱まる」とした際、メイヨーは、集団が崩壊しないために、共通の「信念と習慣」として組織文化を持つことが必要だと説きました。しかしオンライン環境において、組織開発では「円座」での対話が封じられ「信念」が弱まり、組織デザインではオフライン前提で行なっていた管理がなくなり「習慣」も弱まる可能性があります。

そうした際に思考停止するのではなく、新たな組織のあり方を探り、協力しあえる組織をつくりあげることが大切です。オンラインで精緻な管理ができないからこそ、ボトムアップで組織推進する仕組みをつくりあげる必要があります。

オンライン組織設計で大切な事の1つは、組織における「情報」です。前回「情報科学を使い、意思決定精度をあげるための組織デザイン」を記載しましたが、ボトムアップで仕事を進めるためには「個人やチームで意思決定」を行える組織をつくり上げることが大切です。

1).情報格差の根絶

  • 定量/定性情報の透明化を進め、個人が意思決定をするための材料を渡す必要があります。トップダウン組織では、上層部が情報占有を行うことで現場が意思決定を行えず、意思決定を放棄するしかありません。

2).意思決定と評価の明瞭化

  • 意思決定プロセスを定め、組織決定がなされる手順を明示する必要があります。どのような意思決定が評価されるかがわからなければ、心理安全性ができず意思決定をすることができません。

3).成果と集団意思決定

  • 意思決定の結果として起きた成果を随時FBを行える、可視化システムが必要です。その結果を元に随時チームで認識共有しながら、アジャイルに意思決定を行えるチームづくりが必要です。

つまり情報/意思決定/評価/成果の「権利占有」を経営から手放しても、上手くいく組織管理設計が必要となります。ティールやホラクラシーなどの組織設計もこうした「権利の解放」を基本思想としており、社会転換の中で産まれたのは歴史的必然だったかもしれません。そしてそれと紐づき大切となるのは、ボトムアップで自律して推進される組織文化の構築です。そのために組織自体に求心力を取り戻す為の、オンライン環境下での新たな組織開発の対話や、変化に適応できるアイデンティティの問い直しも必要となります。

Mimi &Guriにおいても、私においても、組織の専門家としても。「組織のありかた」を問いなおしながら、あらためてボトムアップで「組織文化」を産み出せる方法論を試行錯誤して、自社にも組織設計のコンサルワークにおいても、探索と実践を行なっていきたいと考えています。それが社会の「失調」を回復させる取り組みと信じつつ。

なによりまずは相手を信頼し、ディスプレイ越しに対話をしてくことがまず大切だとは思います。いろいろありますけど協力しあいながらがんばり、乗り切りたいですね!

以上ミナベでした。


ミミクリ &ドングリはデザインの力で創造性の土壌を耕し、組織の課題解決を実践するデザインファームです。40名の研究者、ファシリテーター、コンサルタント、デザイナーが在籍しながら、具体的な技術から思想や哲学まで含めた広い意味での方法論 (methodology) を学術的に研究しています。

学術研究を裏づけにしながら、組織をよりよくするお手伝いをさせて頂いた実例資料を無料配布しております。下記よりぜひご確認ください。

Contact

イノベーションコンサルティングの
ご相談はこちら

組織と事業の変革を実現するためには、当事者一人ひとりの衝動に蓋をせず、対話的な関係性をファシリテートすること。そして変革の土台となる組織の構造と仕組みをデザインすること。この両輪を回すことが重要です。まずはお気軽にご相談ください。組織をよりよくしたい衝動がある方からのご相談を心待ちにしております。

ワークショップの基本から活用する意義、プログラムデザインやファシリテーションのテクニック、企業や地域の課題解決に導入するためのポイントや注意点について、最新の活用事例と研究知見に基づいて解説します。

※ダウンロードいただいた方には、 最新情報をメールでお届けします。