組織の問題は良い着眼点が見つかれば、すでに半分解決している話。

問題解決より問いのデザイン

アインシュタインは「私は地球を救うために1時間の時間を与えられたとしたら、59 分を 問題の定義に使い、1分を解決策の策定に使うだろう」と言い、ジョン・デューイは「問題が明確になればすでに半分解決している」と述べています。

最近問題解決よりも解く問題の設定(問題提議)が大切と言われますが、デザイン研究においても盛んに研究がなされている分野です。そんな中で、6月4日に共同代表の安斎が「問いのデザイン :創造的対話のファシリテーション」というタイムリーな本を出版するのですが、組織の問題解決においても問題の設定は重要です。

問題の着眼点が悪ければ、問題は解決がされない。

組織デザインの依頼を受けた際に、重要なのが「どう解決するか」より「何を解決するか」の問題設定です。例えばこんな問題解決の依頼があったとします。

評価制度を360度評価に刷新したところ、人への評価が経営と現場で乖離してしまった。どうすれば360度評価を適切に改善できるか?

これは凄いリアリティがある例なのですが、単純にこの着眼点のままに、問題提議するとすれば下記のようになります。

我々はどうすれば、360度評価を適切に改善しうるか?

この場合は360度評価制度に適したJDを構築するとか、別のオンラインサービスを導入するとか、そもそも360度評価を取りやめるなどが着地になると思います。しかしこれでは本質的な組織の問題解決はなされません。

Point of View(着眼点)をリフレームする。

ここで重要になるのが「Point of View(着眼点)」のリフレームです。PoVは海外デザインファームでもよく使われるフレームで「どう解決するか?」より「何を解決するか?」を重視する思考方法です。例えば上記の問題点の着眼点をリフレームすると下記のようになります。

1)大義を問い直す
評価以前に、何を大切にすべき組織文化行動か浸透していないから、評価差分が産まれたのでは?

評価制度はツールであり、手前の組織文化が重要とリフレーミングしました。この場合には評価よりも、まず文化浸透がhowとして適当となります。

2)主体を変える
評価面談を行う、マネジメントが適切なフィードバックができてないのでは?

運用管理者の課題とリフレーミングしました。制度運用に対するマネジメントへの充足的なフォローが必要となります。

3)時間的尺度を変える
評価精度自体が問題というより、長く時間をかけて全員が理解を深めていくべきでは?

評価制度はリリースして終わりではなく、改善しつづけるべきものです。未来にむけみなで協力しあい、改善できる体制構築することがhowとなります。

4)主語を変える
経営が現場理解をしておらず、本当に評価すべきポイントを見れてないのでは?

この可能性も視野に、差分がうまれた箇所を丁寧にリサーチしていくことで、別の組織課題解決につながるかもしれません。

※リフレームのコツは安斎の「問いのデザイン :創造的対話のファシリテーション」から引用しました。

焦って解決するよりも、まずよい着眼点を見つける。

このようにPoint of View(着眼点)をリフレーミングすることで、評価制度のリデザインではなく別の解決方法も視野にいれることができました。より深い問題解決につながる可能性が高まったのではないかと思います。組織の問題解決は、問題設定を短絡的に行ってしまうと、かえって問題を複雑にしてしまいます。それよりも一歩立ち止まり、なにを問題として取り扱うべきか丁寧に思案する必要があります。

Point of View(着眼点)によって、組織問題解決のレバレッジがおおきく変わりますので、ぜひ組織の解決すべき問題設定から考えてみてからアプローチしてみてくださいね。

以上、ミナベからでした!


ミミクリ &ドングリはデザインの力で創造性の土壌を耕し、組織の課題解決を実践するデザインファームです。40名の研究者、ファシリテーター、コンサルタント、デザイナーが在籍しながら、具体的な技術から思想や哲学まで含めた広い意味での方法論 (methodology) を学術的に研究しています。

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