なぜ戦略コンサルティングファームは「デザイン」と「対話」を重視するのか:3つの領域の越境可能性

3月1日よりDONGURIはMimicry Designと資本業務提携を行い、同一横断組織になりました。自分は戦略コンサルタントとしてはダイナミックな動きをする事もありますが、自身の経営においては慎重なタイプで、成功確率が8割を超えなければ意思決定を行いません。そうした未熟な経営者ですが、今回は成功を確信し意思決定しました。

今回の取り組みは「世界的に見ても意義が大きい」と捉えており、ミミクリとドングリ(以降略称でミミグリと記載)がトライする 「戦略・デザイン・対話」の3つの越境における可能性について記載しようと思います。

目次
(1).戦略ファームが、対話とデザインに力を入れる理由。
(2).マクロ構造を変革する、戦略アプローチ。
(3).絵図だけでなく、到達ができるデザイン。
(4).人との対話からイノベーションが始まる。
(5).戦略・デザイン・対話。3つの越境がこれからの鍵。
(6).3つの越境を、ミミグリが突破できる(している)理由。

(1).戦略コンサルファームが、対話とデザインに力を入れる理由。

近年多くの戦略コンサルティングファームがデザインファームの買収を進めています。有名な事例で言えばアクセンチュアの「Fjord」買収。マッキンゼーの「LUNAR」買収。他にも博報堂DYホールディングス傘下の戦略事業組織kyuによる「IDEO」の株式取得などなど。

また同時に話題となっていたのは「組織開発ブーム」に象徴される、「データ」ではなく「対話」を重視した変革アプローチです。世界トレンドでも「意味のイノベーション」の様に対話を起点とした衝動ベースにしたアプローチ方が話題となり、多くの戦略コンサルティングファームが「対話」「ワークショップ」に取り組む戦略部署をつくり、推進しています。

戦略コンサルティングファームの従来の分析的アプローチからすると「デザイン」「対話」的アプローチは180度反対のアプローチですが、なぜこうした流れが発生しているのかを解説します。

(2).マクロ構造を変革させる、「戦略」コンサル的アプローチ。

戦略コンサルタントの取り組みは基本はトップダウンです。定量データを取得し、経営/事業/組織課題を分析し、マクロ解決方法を導きだします。またその推進では経営層やトップリーダーのパートナーとして入り込み、チェンジマネジメントの補佐/推進を行います。

戦略コンサルタントは変化を促す存在として、長い間貴重な外部支援者として活躍してきました。しかし近年ではIT普及による社会変化速度の高まりにより、戦略を描く事だけでは成果を出すことが難しくなり「絵図を書くだけ」と揶揄される事もありました。

そうした背景から各コンサルファームはハンズオンで自ら入り込み、推進することに力をいれているのですが、その推進をさらに強める為に目をつけたのが「デザイン」でした。

(3).絵図だけでなく、到達ができる「デザイン」。

戦略アプローチの弱点が、分析や仮説構築に長い時間を要すること。対してデザインは「まずつくる」ことを基本思想とし、「プロトタイプ」を軸に最速で仮説に辿りつくことを強みにしています。

そうした中で、DesignThinkingのような仮説/価値発見に重きを置くアプローチや、リーンの様に発見した価値の検証を行う方法、アジャイルの様に正しい開発プロセスを通じPMFさせることが世界トレンドとなりました。

多くの成功したスタートアップには「デザイン素養を持った創業者」が存在し、戦略アプローチとプロトタイプ的なデザインアプローチ、双方をあわせ持つことが現代経営の重要事項とされています。またこうした流れをうけて国内でも経済産業省から「デザイン経営宣言」が発令され、多くの企業においてCDOが設置され、デザイン組織が構築されたのも記憶に新しいところです。

しかし戦略とデザインの融合には多くのコンサルティングファームが苦戦をしており、その理由としてあがるのは、戦略とユーザーの間にいる「人」が蔑ろにされがちなこと。

戦略で「トップダウンで進める」にしろ、デザインで「まずやってみる」にしろ、実際にそれを担う「人」という目線は置き去りにされており、故に「戦略として正解は分かったのに、人が動かず実現されない」「やってみて仮説立証されたのに、組織が動かず実現できない」ということが往々にしておこりがちです。

(4).人との「対話」から、イノベーションは始まる。

ハーバード大学のロナルド・A・ハイフェッツ氏によれば、技術革新が進む中で多くの課題の解決方法が解明され、組織に残る大きな課題は「人と人の関係性」の中で生じる「適応課題」としています。どんなに正しい戦略があっても、納得がなければ人は動きません。どんなにユーザーの事を理解できたとしても、つくり手側の創造性をわかせる事ができなければ変化は起きません。組織や人が動かなければ、すべてのイノベーションは始まらないのです。

そして、人やチームが価値観や思想を常に見直し「適応」を繰り返す鍵となるのが「対話」です。

ファシリテーションやワークショップデザインを通じた、「個人の衝動とグループダイナミクス」を産むことが世界トレンドになっているのもこうした背景があり。「対話」には戦略とデザイン、その2つとシナジーを生むピースとして注目がなされているのです。

(5).戦略・デザイン・対話。3つの越境がこれからの鍵。

戦略、デザイン、対話、決してどれが優れていることはなく、3つの共存と越境が重要です。戦略だけで対話をしなければ、組織の求心力は大いに下がります。対話に力を入れたとしても、日常業務のデザインがされなければ変化は起きません。同時に戦略と対話の先に、デザインアプローチがなければ実現が果たされないことでしょう。3つの領域を融かしていくことが大切なのです。

しかし戦略・デザイン・対話。3つの「思想/文化」が全く異なるため相互理解が難しく、組織内でも「上下関係」がついてしまい均等が構築されることは中々ありません。世界中で多くのコンサルティングファームもチャレンジ中のステータスであるかと思います。

こうした状況を突破し、3つの領域が越境して融け合う状態こそが理想であり、私たちミミグリが取り組みチャレンジして行きたい事であります。

(6).3つの越境を、ミミグリが突破できる理由。

今回の提携は「えいやっ」と行ったものではなく、冒頭にもあった様に1年近く「コンサル・デザイン・対話」の越境について安斎とディスカッションと実験をした上での結論でした。具体的には

  • 戦略コンサル/デザイン/対話における、各分野の論文や文献レビューを各方面で行い、3つの越境が実際に可能なのかを探索した。その結果、机上においては持論が完成した。
  • 持論をベースに各自経営する組織で実験的に3つの越境を行い、実践を通して理論の検証を行い精度を高めた。
  • 顧客に対して持論導入を行い、さらなる検証を行った。さらにお互いの組織に属するメンバー同士でPJを行い、シナジーが生まれるかを実際に検証し、大きなバリューが出たため確信が得られた。
  • 互いの組織マネジメント達同士が越境して対話を行い、互いに納得感と衝動を持って「横断組織」として行いたいと思えるかを可能性を模索した結果、「相手を理解できる」「一緒にやりたい」というステータスになった。
  • 元々ドングリはコンサルとデザイン、ミミクリは対話とデザインにそれぞれ取り組んでおり。すでに蓄積された異なる領域に対する文化理解があった。

…などなど。3つの越境の課題となる「思想/文化に対する理解」に最も力を入れて、持論に対する検証成果が出た上での意思決定となりました。まさにこれらの流れも「戦略・デザイン・対話」的なアプローチであり、戦略で3越境した組織をつくり上げる絵図として描きながらも、対話であらゆる可能性を模索しつつ、プロトタイプ的に検証をしつづけてリリースラインに達したと判断してのリリースとなりました。

こうしたプロダクトにおけるPMFのように、FITした感覚を持ち組織推進をはじめられたことで、3つの越境の成功を力強く確信できるステータスになっています。

余談で実は上記の議論は資本業務提携ありきで始まったわけではなく、安斎ミナベによる「3つの越境って可能なのかな?」という問いから始まり、知的好奇心ベースで毎週のように対話を重ねた結果、「越境は可能だね」という結論から初めてHOWがでてきました。そうしたことも非常に私達らしい対話だったように感じます。

おわりに

3つの越境はこれからのコンサル/デザイン業界において、ひいては経営において最も重要な話題です。こうした世界的課題にチャレンジし、ミミグリが市場と社会への解をだしていきたいと考えています。その中で鍵となるのが「思想/文化」の壁の突破が最も重要です。

私たち自身が戦略を組み立てながらも対話をすることを忘れず、さらにはデザインアプローチで実践を果たしていくことがこの突破に繋がり、その先に新たなイノベーションのうねりを起こせると信じています。

プレスリリースをまだお読みになってない方は是非こちらも。


ミミクリ &ドングリはデザインの力で創造性の土壌を耕し、組織の課題解決を実践するデザインファームです。40名の研究者、ファシリテーター、コンサルタント、デザイナーが在籍しながら、具体的な技術から思想や哲学まで含めた広い意味での方法論 (methodology) を学術的に研究しています。

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